Installation continues!!(前回の続き)

前回もったいぶったCPUの換装から行きます!!

CPU換装

まずはCPUの場所を確認。

ここです。この黄色いシールの下にCPUが乗っています。

上のファンにつながっている目立つオレンジ色の棒は銅製の「ヒートパイプ」といって、CPUを冷却するためのものです。

このヒートパイプを外さないとCPUにアクセスできないので、問答無用で取り外していきます。

はい、ファン取りました。

続けて残っているヒートパイプを外します。

これで邪魔なものがすべて取っ払われてCPUへのアクセスが確保されました。

しかし、すぐに新しいCPUを組み込めるわけではありません。

ご覧の通り、CPUに接触していた部分が灰色に汚れていますね。

これはCPUグリスと言って、CPUとヒートパイプの間に塗布することで熱の伝達をスムーズにするためのサーマルグリスです。まずはこれを綺麗に洗浄しなければなりません。

通常、CPUグリスの洗浄は水を含まない「無水エタノール」をつけた布で拭き取ります。

CPUグリスを「無水エタノール」で拭き取った後の状態がこれなのですが、、、CPUに接していた部分だけが綺麗に黒く変色してしいます。

実はこれ、長期間の使用でCPUの熱と劣化したグリスのダブルパンチを受けたヒートパイプの銅材が酸化(不働態化)している状態です。

めっき屋としてこれは見逃せません。

なぜなら、酸化銅(CuO)になると黒く変色するだけではなく、純銅(Cu)に比べて熱伝導率が100倍ほど低くなるからです。

材種熱伝導率(W/m K
純銅(Cu)401[4.01(gJ/[cm・s・K])]
酸化第1銅(Cu₂O)3.74 [0.0374(gJ/[cm・s・K])]
酸化第2銅(CuO)3.22 [0.0322(gJ/[cm・s・K])]
アルミニウム236

ちょっとしたことですが、これではいくらCPUグリスを新しいものに塗り替えても、冷却システムとしての性能をフルに発揮することはできません。

しかし、酸化銅を除去するために手っ取り早い方法としてヤスリやペーパーを当てるなんてことはできません。

なぜなら、ヒートパイプは熱伝達性を上げるために内部に少量の純水を封入する構造になっているからです。

もし穴が空いてしまえばその時点でヒートパイプは即ゴミ確定、削りカスが残って内部基盤内を飛び回りショート(回路短絡)すればPC自体が即スクラップ確定です。

ですのでここは、めっき屋らしく素材に対して化学的に優しく穏やかに洗浄します。

普段、各種銅合金素材へニッケルめっきやクロムめっきを行っている知見をもとに、私はこのヒートシンク材向けの専用洗浄液を少量調合しました。

この洗浄液のすごいところは、脱脂洗浄効果に加えてある程度の表面活性化能力を併せ持っているところです。しかも、この洗浄液の特殊効果で洗浄した後は不活性な被膜を生成しません

つまり、「この液に漬けるだけで、無水アルコールで拭き取っただけでは除去できないミクロな油汚れ(CPUグリス)を除去しつつ、表面変質層となっている酸化銅だけを化学的に除去して純銅の状態とし、その状態を洗浄後一定期間維持する事ができる」わけです。

洗浄前と洗浄後で違いをわかりやすくするために半分マスキングしたら、洗浄液を染み込ませた綿棒で優しく洗浄します。

もう一目瞭然ですね。洗浄液を塗布した部分は綺麗なピンク色になっています。酸化銅が除去できている証拠です。

これで完璧ですね。CPUに触れる場所全体がムラなく綺麗になりました。これで冷却性能も完全復活です。

ヒートシンクのレストアが終わったので、古いCPU換装作業に取り掛かります。

まずは古いCPUを取り外し。

新しいCPUを用意したら、CPUグリスを作っていきます。

今回は、7年前に私がPCを組んだときに余った銀グリスとダイヤモンドグリスを混ぜて使います。

新しいCPUをセットしてグリスを塗りひろげたら、間髪入れずにヒートシンクを組み上げていきます。

ホコリを噛むと冷却性能が下がりますからね。

記載してある数字の順番通りにネジを回して固定すればヒートシンクの位置が合うように設計されています。

あとはCPUファンを取り付けて、CPU換装は完了です。

ここで一度電源をつないでBIOSを立ち上げ、CPUとメモリがパソコンに認識されているかを確認します。

おー!

BIOSできちんと認識されていますね。これでメモリとCPUの導入は無事完了です。

後は、永遠の反抗期と化しているキーボードを新品に交換すればハードウェアのインストールは完了します。

キーボード交換

まずはコイツ。交換用のキーボードです。

前回のブログでも書きましたが、コイツを10月28日に発注かけて届いたのは11月17日です。

まっじで届くの遅い!

海外発送という事もあり致し方ない部分もあるのでしょう。

早速、反抗期のキーボードを取り外します。

キーボードを外すのはCPU換装に比べると簡単なもんです。

こんな平べったくて薄い線でつながっているだけなので、こいつを取り外して新しいものに交換するだけです。

交換出来たら、早速電源を入れてBIOSを起動します。

ちゃんとキーボードの「←」「→」が言うことを聞くようになりました。

これでやっと反抗期が終わりました。このまま、OSをインストールしていきます。

OS(Ubuntu) インスコ!!

キーボード交換でBIOSを立ち上げているので、このままOS(Ubuntu)をインストールしていくための設定をしていきます。

まずは起動モードを変更します。

最新のUbuntuはレガシーBIOSではなくUEFIを推奨しているのでBIOSから起動モードをUEFIに変更します。

デフォルトでは御覧の通り「Legacy(レガシー)」モードになっているので、「UEFI」モードに変更します。

次に、起動順位をUSBからにします。

こうすることで、USBに書き込んだ最新のUbuntuから起動できるようになります。

これでOSインストールの設定は完了です。

「変更を保存して再起動する」を選択したら、最新のUbuntuが入ったUSBを差して再起動します。

すると。。。

ごらんの通りOSインストールの画面が出ました!

「Try or Install Ubuntu」を選択して画面の指示通りにインストールを進めていきます。

使用言語はちゃんと日本語を選びましょう。

これでOSのインストールは無事完了しました。

ここまで完了すれば、後はWindowsをインストールしたパソコンと同様に「Google chrome」を入れてメールソフトの設定をすれば、仕事でつかえる子に仕上がります。

このブログをご覧の皆様は、もうPCレストアなんて簡単ですね。(むっちゃ楽しい!ww

レストア費用

今回のレストアにかかった費用は以下の通りです。

DDR3メモリ8GB×2枚CPU
i7-3630QM
キーボード合計
金額(送料別)¥3,280¥2,000¥1,499¥6,779

レストア費用たった7000円弱で、仕事でつかえるPCをまた1台GETしました。

実はこのブログはレストアした「NEC VersaPro VX-G」から書いています。

これだけの量を書いてもカクついたりせずスムーズに動作してくれています。これは、メモリを16GBに増設してCPUをi7に換装した事が最も大きく影響しています。やっぱ腐ってもi7。インテル入ってる。(←もはや死語ww

これまでは型落ちになってWindowsではカクついていたPCでも、こうやって手を加えればまだまだ使えるマシンとなって私の要求にこたえてくれるというのは嬉しいくもあり楽しいですね。愛着がわきます。

私はこういうのが大好きです。

あとがき

さて、ここまで当ブログを読んでくださった皆様、いかがでしたでしょうか。

実は、私がPCレストアをブログの題材に選ぶのには、ある目的があります。

それは、「めっきに関わる全ての人に、ミクロな視点が大きく関与する原理・原則を理解した上で要素技術を理解し、これらに基づいた捉え方をする事の大切さを知って欲しい」という意図です。

実は、めっきもパソコンも「ミクロな世界での原理・原則に基づいて発生した事象が、マクロな世界に大きな影響を与える」という点で全く同じものです。

簡単に解説すると、「処理速度の遅い型落ちハードを積んだパソコンにどんなに良いCPUやOSを入れたとしても、基本的な処理速度は型落ちハードに依存するので最新型には絶対に敵わないのと同様に、どんなにいいめっきをしても素材自体に欠陥があればそれがめっきの付きまわり速度を低下させた結果めっきの仕上がりは絶対に良くならず、素材欠陥のないものに比べて美観や耐食性では絶対に敵わない」ということです。

近年、「どんなことがあっても絶対に錆びないめっきをして欲しい」という相談が後を絶たないのですが、「この地球上のどこを探しても、絶対に錆びない(イオン化しない)金属は存在しない」という事が解っていればこれがいかにマクロな視点からの無茶苦茶な要求なのか理解できます。

そして、めっきされたものが錆びないようにするためには、金属のイオン化傾向や酸化還元反応といった、ミクロな視点で金属に作用する原理・原則を理解して取り扱う必要があるのです。

めっきをする上で我々人が認知しなければならない事は、どんなにきれいに削ってどんなに肉眼で綺麗に見えていたとしても、全ての金属はナノメートル単位の小さな視点で見ればあらゆる汚れが表面に残留していて、さらに小さな原子・分子レベルで見れば実に様々な不純物が混ざっていて不揃いで欠陥だらけという事です。

もしも数~数十ナノメートル単位で加工・構成されているCPUにこのような汚染や欠陥があれば途端に電子のやり取りが阻害され処理速度が遅くなり消費電力が上がって発熱してしまいます。

だから、あれだけ素材の加工から精密に製材しているCPUですら製造プロセスを微細化する程に歩留まりが悪くなるわけです。そしてこれはめっきでも全く同じなわけです。

ざっくりまとめると、めっきもパソコンも、どの様な環境でどのような目的で使うのかをしっかり想定して使用用途と仕様をきっちり合わせなければならず、ちぐはぐな事をするとよくない結果につながるという事です。

以上、今回はここまでとします。

当ブログで、この視点に気付いてくださる方が1人でもいて下されば、私は大変うれしいです。