今回は、弊社排水設備に水検知器を設置してより迅速な排水のオーバーフロー検知を行って排水管理を改善したよ!!というお話です。

実は、前回出した「Windows10サービス終了その後・・・」のブログの続きを書くために先週からPCパーツの発注をかけてるんだけど、1週間たってもパーツが全然届かないんだよなぁ。。。

海外発送おそるべし!

まえがき

みなさんこんにちは。㈱日本アート1級めっき技能士の稲尾です。

まずは、この場を借りて広島県東厚生成環境事務所・保健所福山支所の皆様に厚く御礼を申し上げます。いつも弊社の排水調査・改善指導及び設備等の改善相談に真摯に対応してくださってありがとうございます。

弊社では、めっきの作業によって発生する全ての排水について水質汚濁防止法や環境基本法といった国や自治体の定める排水基準に合致した状態となるよう自社で排水処理を行ってから放水しています。

弊社の排水は広島県東部厚生環境事務所・保健所福山支所様によって年に数回行われている「排水の抜き打ち採水試験による水質検査」を毎年クリアし続けています。(この水質検査に引っかかると即時業務停止措置・改善命令です。)

今回用意したもの

今回用意したものはコチラ。

Amazonで売っているやっすい水検知器です。

この子は、水を検知するとWi-Fi経由で私のスマホにアラームを飛ばしくれるかわいい子です。

この子を使って排水貯蔵タンクの水位を監視することで、排水がオーバーフローし始めることを事前に検知して通知してくれるシステムを構築できます。

このシステムを構築する事により、排水貯蔵タンクの前にいなくとも異常を早期認知して早期対策をとれるようになるわけです。

インストレーション

まずは実物の本体がこれです。

オモテ
ウラ
裏ブタを開けてバッテリー装着

使用するバッテリーは単4電池です。入手性が高く、裏蓋を開けることで簡単に交換することができます。

この本体のから伸びている白い線の先にふたつ出っ張っている水検知センサーがついています。このふたつのセンサーに水が触れて2極間で微小な電気が通った時に水を検知して通知を飛ばしてくれます。

実際に設置してみたのがコチラ。

ここは総合排水を一時的に貯めるタンクでそもそも汚い場所なのであまりお見せしたくはないのですが、何かの異常で排水量バランスが崩れて出水量>排水量の状態になるとここから排水があふれ、仕事を止めて排水を優先することになるため非効率なわけです。

試しに、水を検知させてみました。

すると、このような通知がきて私のスマホが鳴りました!

因みにこれ、私が社外に居ても鳴ります。

設置に成功!だがしかし・・・

設置実験は成功しました。

だがしかし、ここで終わらないのがめっき屋です。センサー設置して終わりじゃありません。

実はめっき屋では、めっきをする前に金属を酸で洗うのですが、この時に使う酸は主に塩酸や硫酸で、特に排水中の塩酸から微量の塩素が常に気体となって発生します。

このような環境下にバッテリーを装着した電子機器類を置いておくと、電蝕作用によってバッテリーの陽極周辺から腐食して短期間で故障します。

この現象から電子機器を保護するため、ホームセンターで気密性の高いタッパーを買い、この中に本体を収めて保護して設置します。

2025年11月現在、通常の業務だけでなくWindows10のサービス終了に伴ってPCのレストアも行っている私にとって、これでやっと日々の作業に安心して集中できるようになりました!

これで今回の整備は終了です。

そもそもめっきの排水ってどういうもの?

めっきの排水とは、めっきが終わってめっき液から金属製品が引き上げられた際にめっき液を綺麗に洗い流すために使われた水が集まった水のことです。

なぜ製品に残留しためっき液を水で洗い流すのかというと、めっき液の主成分が水だからです。

実はめっき液とは、水の中にめっきしたい金属をイオン化させて溶け込ませたものなので、めっき後にきっちり洗浄を行わないとめっき被膜を化学溶損させて品質を著しく悪化させてしまいます。

そのため、めっき液を綺麗に洗い流すには金属イオン濃度が低い軟水で洗うのが最も親和性が高く、都合がよいのです。

つまりめっきの排水とは、めっきの工程で用いる各種溶液を低濃度で含んだ水の集合体なわけです。

めっきの排水ってどう処理するの?

ではどのようにしてめっきの排水を処理するのかをざっくりいうと、中和反応を応用します。

めっきの排水を中和させると、排水中にイオン化して溶け込んでいた金属成分が中和生成物として水中に姿を現します。この中和生成物等を沈殿除去することで水(H²O)だけの状態に処理してから放水するわけです。

皆さんは中学校の理科の授業で習った「中和反応」という化学法則を覚えていますか?「酸とアルカリを混ぜると水と塩ができる」ってやつです。

代表的な中和反応の例として塩酸(HCl)と水酸化ナトリウム(NaOH)を中和させると塩と水ができるというものがあります。

※中和反応の例※ HCl(塩酸) + NaOH(水酸化ナトリウム) → NaCl(塩化ナトリウム=塩) + H₂O(水)

この反応の場合だと、NaClの部分が中和生成物となり、これを沈殿ろ過すれば後に残るのはH₂O(水)のみとなるわけです。

中和反応の欠点

実は中和反応は「連続して高速に処理する事ができない」という欠点があります。

なぜかというと、中和反応によって発生するのは水と中和生成物だけではいからです。

高速に中和しようとすると、均一な中和が難しくなり完全に中和しきらないまま排水が流れ出て、定められた排水基準をクリアできなくなったり、反応させる物質の組み合わせによっては急な中和による発熱の発生と同時に有毒ガスが発生してしまう危険性があります。

日本の様に特に厳しく設定されている排水基準をクリアするためには、排水処理設備のどこかにいったん排水を貯めるタンクとなる場所を設け、そこから随時定量の排水を中和槽に移して中和反応をきっちり行ってから段階的に処理する事が必要となるのですが、

排水設備のどこかで思わぬ異常が発生して排水処理工程が滞ってしまうと、出水と排水のバランスが崩れて「出水量>排水量」となり、タンクがあふれるという危険を孕むことになります。

さいごに

めっきの仕事をする上で、めっきの品質を上げる事はもちろん大切ですが、めっきをした際に出る排出物を適切に処理する事も同じくらい大切です。

何故かというと、めっきの品質を上げるために使用する薬品を処理できないとなると、そもそもその薬品を使えず品質も上げられないという落とし穴があるからです。

それにしても、パソコンパーツ早く届いてくれないかなぁ。

早く弄りたい。笑